少子高齢化の影響で多くの業種で人材不足が問題となっていますが、不動産業界も例外ではありません。人材募集をしても簡単には応募が集まらない状況が一般化しており、需要はあるのに対応できる人が見つからず、場合によっては黒字倒産となる可能性もあるのです。今回は、不動産業界の人材不足の現状を見ていきながら、原因と解決策についてお伝えします。
エン・ジャパン株式会社が2019年1月29日に発表した「2019年『企業の人材不足』実態調査」を見てみましょう。「現在、人材が不足している部門はありますか?」という問いに対し、「ある」と回答した業種は、「IT・情報処理・インターネット関連」「不動産・建設関連」「メーカー」の3業種が91%で同率トップとなっています。
2年前の調査からは、不動産業は他業種に比べても人材不足が深刻であることがうかがえます。 では、最近ではどうでしょうか。
厚生労働省が2021年2月3日に発表した「令和2年上半期雇用動向調査」を見てみましょう。 不動産業・物品賃貸業は入職者数が「76万6,000人」、離職者数が「62万7,000人」と若干ながら入職者数が離職者数を上回っています。この結果だけを見ると、不動産業の人材不足問題は改善傾向にあると思うかもしれません。
しかし、離職率を業種別に見ていくとどうでしょう。不動産業、物品賃貸業の離職率は8.1%で、全16業種のうち、宿泊業・飲食サービス業、教育・学習支援業、サービス業(他に分類されないもの)、生活関連サービス業・娯楽業、医療・福祉に次いで6番目に多い割合です。離職率が高いため、人材不足問題が解消されたとはいえない状況なのです。
入職者数が離職者数を上回っているにもかかわらず、不動産業界の人材不足問題が必ずしも解消されているわけではないのはなぜなのでしょう? その原因として、次のような点が考えられます。
不動産流通推進センターが2020年3月に発表した「2020不動産業統計集(3月期改訂)」によると、不動産業の法人数は毎年、前年の約1~3%の割合で増加を続けています。つまり、入職者数は増えているものの、法人数も増えているため、一法人単位で見ると必ずしも人材が増えているとはかぎらない状況があります。
不動産評価Webサイト「TAS-MAP」を運営する株式会社タスは、2020年8月に「賃貸住宅市場レポート首都圏版・関西圏・中京圏・福岡県版2020年8月」を発表しました。同レポートでは、新型コロナウイルスの影響により、賃貸住宅の需要は大きく低下したことが報告されています。とくに首都圏ではその影響が大きく、2020年上半期だけで約2万6,000戸の住宅需要が消失したと推測しています。
一方で、戸建てや郊外の分譲マンション需要は逆に増加しました。例えば、東日本不動産流通機構が2020年8月に発表した「不動産流通市場の動向」では、首都圏の中古マンションの成約物件は前年同月比でプラス18.2%。中古戸建住宅はプラス21.8%と大幅に増加しています。
このため、賃貸では少ないパイを多くの業者で奪い合うかたちになり、販売では逆に、いままで以上に顧客へひんぱんにアプローチをかける必要性が生じているのです。
結果として、営業職を中心に多忙になる傾向が見られ、入職者数が若干増えたとしても、人材不足の解消とまではいきにくい現状があると考えられます。
前述したように、コロナ禍においては、不動産業界のなかでもとくに営業職の忙しさ、きつさは突出しています。 コロナ禍の影響だけではありません。不動産は高額であり簡単に成約にいたる性質の商品ではないため、成約するために、顧客に合わせて休日出勤や早出残業などをする場合があります。そのため、勤務時間も大きく変わりがちです。
また、歩合制でノルマを果たせないと収入が安定しないといったケースも少なくありません。そのため、より多くの人材が必要とされる営業職の志望者が少ない、営業職に就いても短期で離職してしまうといったことが考えられます。営業職に就く人材の不足が、そのまま不動産業における人材不足につながっているといえるでしょう。
▶不動産営業の課題については、「不動産営業はきつい?その要因と解決する方法を解説」をご参照ください。
少子高齢化が急激に解消することが期待できないのは事実です。そんななかで、人材不足問題を解消することを急ぐあまり、してはいけない点がふたつあります。
人材不足のもっとも簡単な解消法は、新たな人材の募集です。もちろん必要なことですが、無計画に募集をかけてもなかなか良い人材の確保に結びつかず、時間と手間だけがかかるおそれがあります。
また、求人広告にかかるコストや採用後の教育コストもけっして小さい金額ではありません。コストをかけてなんとか人材を確保できても、ミスマッチによる早期退職のリスクもありえます。
新たな人材を獲得するもうひとつの方法として、アウトソーシングへの依頼があります。すでに多くの経験のある人材を獲得できるため、ゼロから採用活動を行うよりも低コストで行えます。
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